16.  湧網線知来駅

〈位置〉 佐呂間―仁倉 間

〈開業〉 昭和11年10月17日(一般駅)
    →昭和47年2月8日(無人駅)
    →昭和62年3月20日(廃止)

〈乗車客数〉 不明(多くても数人?)

〈概要〉

サロマ湖からはやや離れた内陸の典型的な酪農地帯にある小駅で、周辺にはわずかだが水田も見られるという。アイヌ語のチライ・オッ(いとう魚が多くいる)から生じた地名・駅名と言われており、恐らくは札沼線の"知来乙"駅なども同じ語源と思われる。"イトウ"は全長2mにも達するサケ科の淡水魚で、日本では北海道にしか生息しない珍しい巨大魚だが、近年は道東・道北の一部の河川を除いてほとんど絶滅状態にあると言われている。昔は近くを流れる佐呂間別川(浜佐呂間駅付近でサロマ湖に注ぐ)にもたくさん生息していたと思われるが、現在では全くその姿を見ることはできないという。
 床丹駅と同様、片面使用の短い土盛りのホームは駅舎との間が少し離れており、昔は"島式"で行き違いが可能な構造だったのではないかと推測される。駅舎の方も、かつて有人駅だったにしてはちょっとこぢんまりとし過ぎている感じがするので、昭和47年の無人化後に待合室スペースを残して改修されたか、新たに建て直されたものではないだろうか。(トップの写真:鉄道マニア氏より拝借)


〈訪問記〉

例によって、残念ながら廃止前には1度も乗下車したことはなく、廃線から7年ほどしてようやく訪問の機会を得た。道道103号線沿いにあり、周囲には特に目立った建物もないため、レンタカーで"知来"のバス停を通り過ぎると間もなく白い旧駅舎を発見。インターネットの情報通り、駅跡は"知来ゲートボール会館"に生まれ変わっていた。旧ホーム付近は凹凸なくきれいに整地されていて往年の雰囲気は既に感じられなかったが、問題の駅舎は外壁を白っぽく、屋根を赤く塗り替えられているものの、ゲートボール場の休憩室(?)としてほぼそのままの外観を保っている。駅時代は向かって左手に大きな庭石(?)があったり、架線用の電柱等も複数見られたが、現在は周辺部分もきれいに取り払われていてちょっとあっけない印象だ。(上および右の写真)訪問したときは丁度"試合の最中"だったため、躊躇われて内部を覗き見ることはできなかった。


昭和59年頃にも同駅周辺を訪れたことがあった。佐呂間―知来間には"興生沢"と"堺橋"、知来―仁倉間には"紅葉橋"と仮乗降場がダンゴになっていたので、ついでに紹介しておく。(左および下の写真)当時は"最も小さい駅"である仮乗降場の方に興味があって、苦心の末に写真を撮り歩いた記憶がある。左下の堺橋仮乗降場などはわずか1日3便の停車本数しかなく、車なしの撮影は非常に困難だ。駅名標は"さかいばし(堺橋)"となっているが、交通公社版・北海道時刻表では"さかえばし(堺橋)"、弘済会版・道内時刻表では"さかえばし(境橋)" とバラバラ。他にもたくさん例があるが、国鉄本社未公認で全国版時刻表には載らなかったためか、仮乗降場の扱いは結構いい加減な感じだ。その多くが板切れを組んだだけの簡単な構造であったため、普通の駅に比べてさらに遺構や痕跡などが残りにくく、現在では位置を特定するのも困難なケースが多い。




〈知来駅のきっぷ〉

普通入場券 30円券(昭和46年発行・コピー)。同駅における出札営業(きっぷの発売)の最終日は昭和47年2月7日で、入場券は30円券(大人小児用)まで確認されている。なお、無人化後は駅前商店が"乗車券発売所"だったことがわかっているので、恐らく床丹駅と同じような簡易委託券("ム券")が存在すると思われる。情報や現に実券をお持ちの方は是非ご一報ください。


※ その後、"ラミー"様から知来駅の簡易委託券のコピーを送っていただきました。やはり床丹駅のものと同じ"佐呂間駅発行"(管理駅)ですが、この券の方にはなぜか"ム"の記号が入っていません。調べてみると他にも同様の例が複数存在するため、旭鉄局管内の簡易委託券(硬券)に限ってはむしろ"ム"の記号が入っていない様式が普通で、却って床丹駅の券の方がミス券とも思われます。真相をご存じの方は是非お知らせください。(画像提供 / ラミー氏)


◆ラミー様、いつも本当にありがとうございます。


※ さらにその後の調査で、簡易委託乗車券については原則的に「乗車券(急行券を除く。)を発売する場合は券面に("ム" マルム)の表示をするものとする。」(乗車券簡易委託発売基準規程・第6条)という規程があり、やはり"ム"の記号がない知来の方がミス券とも思いましたが、一方で「(その委託乗車券発売所が)管理駅の"駅外出札口"になっている(管理駅にその券の口座がある)場合は"ム"の記号を付けない」という決まりがあることもわかりました。よく見ると旭鉄局管内の委託券はすべて券面に「(管理駅)発行」のように印刷されていますので、やはり床丹・知来駅の場合は後者の規程によるものと判断されます。右往左往しましたが、私見ではやはり床丹の方がミス券であろうという結論です。余談ですが、この場合でも管理駅の口座にない券を委託する場合には"ム"の記号を付けることになっているらしく、実際に増毛駅(同じく旭鉄局管内で管理は留萌駅)発売の券の中に後でわざわざ"ム"の記号をゴム印で捺印した例が見られます。参考文献:「国鉄きっぷ全ガイド」(近藤喜代太郎・日本交通公社・1987)