【”硬券”について】

文具店でふつうに売られている”厚紙”をさらに丈夫にしたクリーム色の上質紙(国鉄・JRの場合)で調製された乗車券類・その他の料金券の総称です。自動券売機や印刷発行機のペラ券(”軟券”)に比べて”きっぷ”らしい風格があり、また、文字や地紋様が色あせにくく長い年月の所蔵に耐えることから、圧倒的な人気があります。

1.硬券のサイズ

イギリスの鉄道員トーマス・エドモンソンが19世紀の中頃に考案した世界最初の硬券のサイズ(2・1/4 X 1・3/16インチ)が事実上の規格となり、全世界に広がりました。わが国ではこの大きさを”A型”と呼びます。硬券は現在駆逐されつつありますが、近距離の自動券売機券などはそのままAサイズを踏襲しており、大きさの規格としては今後も生き残っていくと思われます。その他、”B型””C型””D型”という規格もありますが、すべて”A型”を基準にわが国で考案されたものです。

A型: 3 X 5.75 cm(図は多少拡大されています。以下同じ)

昔はほとんどすべての券種に用いられていましたが、戦後は少しずつ他のサイズに取って代わられるようになりました。近年は中距離以上の普通片道乗車券・往復乗車券・自由席特急券などに用いられています。

B型: 2.5 X 5.75 cm

昭和3年に初登場し、戦中・戦後の紙不足の時代に広まった規格で、A型より縦が若干短くなっています。近年は近距離の普通片道乗車券・普通入場券などに用いられています。

C型: 6 X 5.75 cm

A型を上下に合わせたもので、明治40年頃から各種の連綴券や割引乗車券など、記載事項の多い券に用いられましたが、裁断ミスやロスが多かったため、昭和40年頃から急速に廃止の方向に向かいました。以後も細々と命脈を保ってきましたが、大阪地区の数駅を最後に昭和60年頃にはほぼ姿を消したと思われます。左図は、廃止直前の珍しい連続乗車券の例です。(右端は駅側で管理するため切断してあります。”甲の1”片のダッチングの入り方に注意。(このような向きにならざるを得ない。)様式的には”補充連続乗車券”ですが、”甲の1”片が常備式(印刷済)になっているのが変わっています。)

D型: 3 X 8.7 cm

逆にA型を横に長くしたもので、戦前の補充片道乗車券が起源と言われています。したがって、昔は右端が切断された状態で発売されることがほとんどでしたが、昭和40年頃から各種の料金券に多様されるようになって、フルサイズの券をよく見掛けるようになりました。近年は、座席指定の各種料金券・複数の料金券を一葉化したもの・記念入場券などに用いられています。


2.硬券のバラエティ

国鉄・JRの硬券は、長い間全国9ヶ所の”印刷場”(札幌・仙台・新潟・東京・名古屋・大阪・広島・高松・門司)で作製されてきました。乗車券類の様式は本社の「旅規」(旅客営業規則)に定められていましたが、細かい字体や微妙なレイアウトの違いは黙認されたため、それぞれの印刷場独特の特徴があり、ちょっと慣れれば券の駅名部分を伏せられてもどこの印刷場調製か見分けることが可能です。各印刷場のバラエティについては、長沼宏幸さんのHP(「きっぷのページ」)に詳しい解説がありますので参照してください。


3.硬券を取り巻く状況

自動券売機・印刷発行機の普及や印刷技術・電算機の発達により、硬券の需要は急速に減少しており、今や風前の灯火と言っても過言ではないでしょう。JRでは、平成に入った頃からJR東日本やJR西日本の人口集中域の駅から順に姿を消し、次第に地方に広がって、私の住むJR九州でも平成7年6月30日をもって硬券が全廃されました。平成13年7月現在、JR北海道などで普通入場券・委託乗車券等が痕跡的に残っている程度で、各印刷場(その後”乗車券管理センター”と改称)が廃止に向かっている中、JRの全廃は時間の問題と思われます。私鉄でも、都会部の大手・準大手がJRにならって硬券の廃止に傾いている一方、(その必要がなさそうな?)地方の中小私鉄までもが右にならえとばかりに口座を縮小しており、全国の鉄道の”きっぷうりば”から「カシャッ」という日付印字機(”ダッチング”)の音が消える日も間近いようです。