【プレミアの付く条件】

どのようなコレクションにも共通しますが、簡単に言えば、”稀少”で”人気”があって”綺麗”なものほどプレミアが付きます。
ここでは”普通入場券”について解説しますが、その他の券種についても同じようなことが当てはまると考えて差し支えありません。

1.廃止もしくは無人化・軟券化された年代が古い。

入場券コレクションの世界では最も重要なファクターです。一般に、廃止・無人化・軟券化年代が古い駅の入場券ほど高価といえますが、昭和59年以降に廃止・無人化されたものはほとんどプレミアが付いていません。昭和58年、北海道の白糠線廃止に始まる赤字ローカル線の一斉廃止に伴い、入場券マニアの急増とその手の業者の大量買い付けにより、現存枚数が非常に多いためです。戦後の券で各オークションの落札結果による現時点の基準相場は概ね以下のような感じです。(異論のある方もおられると思いますが...。)

廃止・無人化された年代 落札相場 注)
昭和40年以前 25000〜円 15000円以下では買えない
昭和40〜50年 10000〜円 8000円以下では買えない
昭和51〜58年 2000〜8000円 1000円以下では買えない
昭和59年以降 200〜1000円 平均500円前後

※ 上記の値は状態が比較的良好な場合の基準価なので、例えば、”折れ”があったり、ひどい汚れがあったり、小児断線で切断されていたり、裏面に”貼り跡”があったりすると価値が半減〜1/20減になるようです。また、そこまでいかなくても、日焼けがあったり、小さい”しみ”があったり、薄く”すじ”が入っていたり、入鋏されていたり、料金変更印が押されていたり、無効印が押されていたり、日付がきれいに入っていなかったり、逆日付・無日付の場合もプレミアがやや低くなります。(3.券面が美麗である。参照)

※ 軟券化の場合も、同時期の廃止・無人化券に比べると若干プレミアが低くなります。早期に自動券売機を導入した駅は、沿線の主要駅(大きな駅)であることが多く、もともと現存枚数が多いためです。

※ 昭和50年以前の券は数が少ないため、多少の状態不良はマイナスにならない場合もあります。どうしても欲しい人はかなり高目の値で入札するため、その時の運で買えたり買えなかったりしますが、”これ以下では絶対無理”という下限はあるようです。上限は決めにくいですが、私が覚えている範囲で最も高額の落札は、廃止された芦屋線(福岡県)筑前芦屋駅の10円券で、値はたしか67990円でした。明治・大正期の超レア物を除くと、100000円を超える券はほとんどないと考えてよいと思います。これらのプレミア価格は、他のコレレクターズアイテムに比べると比較的安いと思われるかもしれませんが、購入時の額面はたかだか10円とか30円なので、比率で計算すると大変な値上がり(何千倍)と言えるのではないでしょうか。


2.総発売枚数が少ない。現存枚数が少ない。

1.と重なる面がありますが、なんらかの理由で同じ条件(同じ路線、同じ廃止日など)の他の駅より発売枚数が少ない場合があり、それらの駅では相場が高くなっています。例えば、以下のような場合です。


3.券面が美麗である。

コレクションの世界では共通する条件ですが、”きっぷ”の場合は材質が紙であるため、割合に微妙な”キズ”がつきやすく、落札後品物が手元に届いてからがっかりさせられてしまうことが度々あります。破断(破れている)は論外として、しばしば目にする”キズ”で致命的なのが「折れ」です。妙な”癖”があったり、マニアの心理に理解がない出札氏が日付印字(”ダッチング”)の際につけてしまうことも多いようですが、よほどのレア物でない限り、たとえ1ヶ所でも確実に価値が半減(あるいはそれ以下)してしまいます。また、「折れ」が不完全で、券の表面または裏面に限局したものは「筋(スジ)」といい、やはりマイナスポイントになります。その他、ポピュラーな”キズ”としては以下のようなものが挙げられますが、いずれもその程度によりプレミアを下げる要因となりますので、購入・入札前に十分な確認が必要です。


4.入鋏されていない。

広い意味では3.に含まれますが、意外と見解が分かれるので別項としました。一般的には、「入鋏」されている(「パ」ンチが入っている)券を”使用済み”と考えて、”未使用”品(「未パ」)より低く評価する傾向があり、「鉄道入場券図鑑」(日本交通趣味協会 1980)ではその価値を”1/3”と解説していますが、実際の売買ではもう少し高め(せいぜい2/3位?)で取り引きされている感じがします。マニアによっては、その駅の”鋏痕”(パンチの形)がわかってこの方がよいという人もおり、オークションなどでは「未パ」並の値をつけて欲しがる人も少なくありません。実際、10円券以前の稀少なものは「パ」でも「未パ」でも相場に大差はなく、そもそも入場券の場合は”古物”とか”中古”などの概念はそぐわないので、私自身も「パ」の価値基準については疑問を感じています。また、パンチの位置も重要で、普通に下部に入鋏されているものを基準にして「上パ」「右パ」「左パ」はやや価値が低く、鋏痕が印刷された文字や日付印にかかっているものも割引の対象となります。


5.最終日付である。

廃止・無人化・軟券化される駅で、出札最終日のダッチングが入った券は、普通日付のものより数割増しの相場となります。特に、残存枚数が多い昭和59年以降廃止の券はプレミアが付きにくいため、「最終日付」にこだわって収集している人が多いようです。ところが、最終日のダッチングについては以下のような疑問点(「偽最終日」?私の"造語"ですが..)があり、個人的にはあまり興味がありません。


6.最終額面券である。

前項と似ていますが、たとえ最終日付でなくても、廃止・無人化・軟券化時期に近い日付で額面が同じならば、その他の額面券よりも高い相場で取り引きされるケースがあります。

また、上記の場合で、それが最終日付であればさらにプレミアがプラスされます。
なお、60円券(昭和51年11月15日)以前に廃止・無人化・軟券化された駅でも、概ね最終額面券の方が人気がありますが、もともと存在自体が稀少なため、それほどプレミアには影響がないようです。逆に、昭和59年以降のものについては、残存枚数が多いため、80円券以降ならば額面はあまり評価の対象となりません。


7.限定発売の入場券。

あまり例は多くありませんが、一部の駅では発売期間や発売枚数を限定して硬券の入場券を発売する場合があり、”限定”の規模によってはかなり高額のプレミアが付くことがあります。


8.特殊様式の入場券。変わり種入場券。誤印刷の入場券。

入場券の様式は10円券以降も度々改訂が加えられており、その過程において特殊な様式の券や過渡期には”中途半端な”様式で印刷された券があり、稀少なものはやはり高いプレミアが付いています。

また、「ミス券」と総称される誤印刷の入場券を専門に収集しているマニアが結構いるため、珍しいものは数割増しで取り引きされています。比較的多いのは、駅名や文面の文字自体(活字)の間違いや文字順の入れ違い、アンダーラインの位置のずれなどですが、極稀に料金欄の間違いや小児断線の欠落といった致命的なものもあり、今後プレミアが上昇する可能性があります。


左図は”乗入併用券”ですが、下に小児料金の記載があるのに、なぜか小児断線がありません。大人専用券ならば小児料金の記載は必要ないと思われるので、ひょっとしたら「ミス券」かもしれません。


9.駅名に魅力がある。

入場券がもともと極めてシンプルなデザイン(地紋様がなく画一的な様式)であるがゆえに、唯一バラエティのある「駅名部分」が”見栄え”するかどうかは、意外と重要な要素となります。廃止・無人化の時期や券面の状態、稀少性などにあまり差がない場合、”魅力がある”(例えば、「当用漢字にない珍しい字(体)が入っている」「読みが難解」「音の響きが美しい」などの)駅名の券に人気が集中するのはやむを得ないことです。


例えばこの2枚の券は、駅の無人化時期がほぼ同じ(左:昭和54年1月31日、右:昭和54年3月9日)で、稀少性にそれほど大差はない(むしろ「パ」である分、右の方が価値が低い)と考えられますが、同時にオークションに出た場合、概ね「美利河」駅の方が高額落札となります。総じて北海道の駅名は、「美利河」(「ピリカ」(美しい))のようにアイヌ語に由来した難解なものが多く、入場券マニアには人気があるようです。


10.券番や日付が珍しい。

裏面に印刷された券番で珍しい並びのものや日付の並びの珍しいものは、専門の愛好者がいるため、多少高額で取り引きされるようです。
国鉄券の券番は大体4桁なので、プレミアの対象となるのは以下のようなものに限られます。

日付の場合も同様に、「54.-3.21.」「55.-5.-5.」「11.11.11.」などが話題となりましたが、券番に比べると稀少性が乏しく、バリエーションが多いため、それほどの付加価値はありません。